ワークショップのねらいは「新しい音楽がまとう不可解さに潜む面白さ」について,参加者の代替不可能性を引き出し,そして,それを参加者自身に実感していただくこと,である。
今回は,新しい音の追求につきまとう「わからなさ」に焦点をあてた。現代を生きる作曲家は常に新しい音を希求し,わからない世界を楽しんでいる人間ともいえる。“異”を探し求めているとも言える。つまり,“異”との出会いとは,「わからなさ」との出会いと言い換えることもできるだろう。
なんだかよくわからないものと突然直面した時,人は大きく揺さぶられる。ただ,それを開示する機会は少ない。というより開示を躊躇する。本来ならば無縁の尺度であるはずの「正解・不正解」を無意識的に持ち出そうとするからだ。
それならば,この場にいる全員が平等に転びそうになりながら「なんだかよくわからないね。あはは。」というところから出発すれば,「正解・不正解」に引きづられることなく,参加者の代替不可能性である「自分なりの見立て」に向かえるかもしれない。
そのためには,ある程度「わからなさ」に没入してもらわなければならない。
その仕掛けとして,辿り着いたのが突然の即興演奏であった。