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#07 早く終わらせたい指揮者・もっと演奏したい参加者

企画者レポート(全9回)

指揮者を務めた山本は,毎回極度の緊張を持ちながら全力で転倒する役割を全うした。

はじめて会う人に向かって突然演奏をお願いする。これまで様々な試みをプロの奏者相手に怪訝な顔をされながらも突破してきた作曲家も,グラグラに揺さぶられる体験だったようだ。申し訳ないことをしてしまった,という思いや,この場が愉楽になっているかどうかわからない,という不安を持ち続けていたのだろう。演奏は毎回5分ほどで終了した。

しかし,後に行われる省察で真っ先に出た意見が「(体験が)短かった」,「これから,というところで終わってしまった」だった。これは,明らかに指揮者と参加者の間で,時間的なズレ,感覚的なズレが生じていた,ということになる。

これは,私も最終日に自分自身に訪れた「転倒」ではっきりと自覚した。最終日,何の打ち合わせもなく山本は突如スタッフである私に指揮をするように仕向けた。架空の演奏者ではなく,作曲者自らのボイコットである。

不意に訪れた指揮者という役割で,<中の人>であった私も見事にすっ転んだ。

 

動きがワンパターンになり,面白くないんじゃないか,と不安になる。後から考えれば,あーすればよかった,こーすればよかった,そもそも誰かに指揮を変わってもよかったかも,と色々と浮かんでくるが,その場ではそんな考える余裕もなく,夢中で体を動かし続けた。そして,その省察で言われた。「短かった」と。

「体験が短かかった」と思われたのは,申し訳ないと思いつつ,それだけ演奏に集中していただいていた,とも考えられ,素直に嬉しく思った。また,「もっと演奏したい」という前向きな姿勢は,こちらの予想を遥かに超えた嬉しい意見だった。

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